出版した本(特に自費出版)が書店に並ばず、売れない理由


出版する方法の一つに「自費出版」という手段があります。

一般的には記念の意味合いなどで活用され、いわゆるブランディングなどに活きるような目的で出版したいと思っている人からは否定的な見方をされがちなのかな・・・と思います。
  
  
私も結論から言えば「自費出版までする必要はないのかな・・・」という考えを持っていますが、その根拠の本質は「売れない(=世の中の人に見てもらえない)可能性が極めて高い」になります。

そのあたりに関する「本が売れる、売れない」について、僕が出版する前には気づいていなかったポイントについて、実際に商業出版(出版社が予算を立てて出版すること)して売れるところまで行けた立場から、まとめてみたいと思います。

※以下、ビジネス書出版を想定したお話しとなります。その前提を踏まえた上でお読みください。

出版したいと思っている人が、よく勘違いしていること

まずはじめに、出版したいと思っている人(自費出版、商業出版問わず)が、よく勘違いしていることを2つ、以下に挙げてみたいと思います。
  
  
1.本を作れば書店や出版社が売ってくれる

2.書きたいように書いてよい
  
  
まず1の内容について、私も初出版の時までは、出版したら書店に自分の本が置かれ、出版社が販促プロモーションをやって売ってくれると思っていました。

しかし、まず書店の立場からすると、やはり書店もビジネスをやっているわけで、その書店に置くことができる本の数はスペース以上に増やすことができないため、売れる可能性が高い本が優先的に並べられます。

ご存じの方もいらっしゃるかもしれませんが、書店には毎日100点以上の新刊が届くそうで、それらを全て並べられるスペースはないのです。

つまり、売れるかどうかが未知数の著者の本は、既に売れている本や売れている過去実績のある著者の本が並べられた後に残ったわずかなスペースに置いてもらえるかどうかの判断になってくるのです。

出版の予算を誰が出している人は誰?

そして、そのわずかなスペースに本を置いてもらうべく、出版社は「この本いい感じなので、売れる可能性が高いですよ」と、営業セールスをかけます。

その時、多くの出版社では1ヶ月に複数冊の新刊が発売となるので、営業セールスをかけようとする新刊は、その複数冊の中でも「売れそう」と思う本から順番に営業をかけていくことになるのです。

もちろん、この複数冊の新刊というのは、基本的に出版社が予算を投資して制作した本になり、原価回収は必須となるので、ある程度の営業は為されると思いますが、セールスをやったことがある人ならお分かりのとおり、セールスの基本は「売れるもの(=世の中の人が求めているもの)を、買ってくれる人(=それを求めている人)に届ける」ことになるので、営業熱の差は多かれ少なかれ、生まれざるを得ない環境にあるのです。
  
  
そんな中、自費出版というのは出版前の段階で、著者から原価を回収している状態なので、出版社の立場から見ると自費出版には赤字リスクは全くありません

赤字になることが絶対にない本と赤字リスクがある本、どちらを優先してセールスしなければならないか、一目瞭然だと思います。

つまり、書店内ではもちろんの事、同じ出版社内でも売れる本を売ることが優先になるほど熾烈な競争の中で、原価回収済みの自費出版の本を売ろうとすることはまずないという事です。

もっと端的に言えば、自費出版しても書店に本が並べられる可能性は極めて少ないという事です。

書店数と初版部数の関係

そもそも論になりますが、自費出版の場合、初版発行部数(最初に作る本の数)は著者側の予算次第になりますが、1000部(大体200~300万円の持ち出し)あたりが多いのかなと思われます。

それに対して直近の全国の書店数は、ざっくり12000書店(2017年)だと考えると、12書店に1書店しか本を置くことができないのです。

ちなみに商業出版だと、著者経歴にもよると思いますが、初出版の初版発行部数は4000~5000部くらい、「思い切りましたね」と言われる数字でも7000~8000部といったところになり、それでも全国の書店全店に並ぶことはない部数なのです。
※商業出版の初版部数は、出版社×著者の掛け合わせによって、かなりバラツキありますので、あくまでも参考値という事で。あと、ビジネス書想定の数字です。

この観点からも、自費出版だと書店に本が並ばない可能性は高い事がお分かり頂けるのではないかと思います。
  
  
ただ自費出版の場合、制作開始時点で原価回収済みなので、商業出版と違い、原稿や内容は基本的に好きなように書くことが可能になります。

しかし商業出版の場合は、出版社が予算を立てて本を作ることになり、つまりそれは売上責任を負う事も意味しているので、その編集権限は売上責任を負う出版社の編集者が持つことになるので、自分の好きなように本が作れるわけではないのです。

もちろん、本の場合「売れる=多くの人に見てもらえる」という意味になりますので、編集者さんも「より多くの人に見てもらうために」という気持ちが入るので、一人で書いた原稿と比べたら、確実に質の上がった内容にブラッシュアップされるので、場合によっては著者側の方が勉強になることもあると思います(僕はいつも勉強させられっぱなしです^^;)。

自費出版してでも、出版する価値があるとしたら・・・

このように自費出版は、端的に言えば「自由に本の内容は書けるけど、販路はない」ということになります。

そんな中で自費出版をやる価値はあるのか・・・?
  
  
もしあるとしたら、まず「販路がない」の致命的デメリットを、SNSやHPなどでカバーできるのであれば、好きなように本の内容を作れるので、良いのかもしれません。

例えば、人気のブログ記事を無料でたくさん配信して、そこにたくさんのアクセスがあって、ファンも数多くいる状態になっているとしたら、そのブログ記事を書籍にまとめて、コレクション商品として売る、といった感じです。

「ただ本にまとめました」というだけでなく、例えばカバー装飾を高級感のあるものにして、価格も一般的なビジネス書であれば1500円ちょっとだと思いますが、3000円以上する値付けをして、「読むための本」ではなく「コレクションの(飾る)ための本」を前提とした書籍を作るといった感じですね。
  
  
ただ、そこまでの事ができて、売る力も持っていて、フォロワー数、PV数も持っている人であれば、そもそも自費出版を考える前に、どこかしらの出版社が出版オファーをかけている可能性が高いと思う気がします・・・。



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角田 和将(Tsunoda Kazumasa)
角田 和将(Tsunoda Kazumasa)
速読コーチ/ビジネス書著者/認定テクニカルアナリスト(CFTe®)

著書に6ヶ月で10万部を超えるベストセラーとなった「1日が27時間になる!速読ドリル(総合法令出版)」をはじめ、『速読日本一が教える すごい読書術』(ダイヤモンド社)、『出口から考えるFX』(パンローリング)などがある。著者累計は15冊で33万部超え。
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