一般的には非常識かもしれないけれど、出版業界では常識になること


まずはじめに、タイトル的には出版業界を批判するような内容に見えるかもしれませんが、まったくそんなことはありません。
はじめに断言しておきます^^;
  
  
目的は様々だと思いますが、特に個人で活動されている方がブランディングということで出版したいと考えるケースは多いように感じています。

ただ、出版業界を知らず、「本を出したい」と思っている人が、この記事のタイトルにある慣習を知らず、ひどい場合は商業出版だと言いながら、自費出版以上の出費を求められる契約を交わしてしまうこともあるようです。

なので、そのあたりに関することを啓蒙する意味で、一つ記事に残してみたいと思います。

一般的なサービス業の契約は作業開始前に締結される

一般的なサービス業の商取引を考えてみてください。

たとえば、家を建てようとしたとき、設計図やミニチュア模型などを使いながら「こういう家を建てることで良いですね?」と、家を買う人と建設会社の人の両者で合意し、合意確認ができたら契約書を交わして、その後に建設会社の人は工事を始めると思います。

合意後に、依頼主から「やっぱりこうして、ああして」と言われてしまっても、既に工事に入ってしまったら、工程的に対応できないこともあるでしょうし、資材材料や人件費も既に使い始めている状態なので、家を作る側からすると、「どういう作業でいくらの金額で」ということを、作業する前に契約という形にして残しておこうとするのが自然な考えになります。

エステなんかも、予めサービス前に利用条件を確認合意した上で、施術を始めると思います。そうでなければ、元々1回のエステ料金が10000円となっている中で、サービスを受けた後に「俺はこのサービスだったら5000円しか払わん」と、まるでジャイアンのような言われ方をされてしまったら、トラブルの元になってしまいます。

なので、一般的な商取引で考えると、基本的には作業前に契約を締結する、と考えるのが普通なのかなと思います。
  
  
しかし、出版業界においていうと、どれだけ早いタイミングで契約締結になったとしても、執筆作業が終わった後になります。

つまり、本一冊分の原稿を書くだけ書いた後で、「やっぱり本出せませんわ」となってしまう可能性があるということです。

なぜ出版社との契約は原稿を書き終わった後に締結されるのか?

実際のところ、本一冊分の原稿を書いた後で「やっぱ、や~めた」となることは、少なくとも私は経験がありません。
(自分で全破棄して、全書き直しをした経験はありますが><)

ではなぜ、本が出る直前まで、出版社は契約を交わさないのか?
  
  
一番の要因は、著者が書き切れない可能性にあると思います。

たとえば、本を出したことがない人ですと、本1冊分の文字量の原稿を書き切れるかどうかがわからないのです。

さらに言えば、本を出す人(著者となる人)は基本的に何らかの分野でのスペシャリスト、専門家になるため、仮に原稿を書き切ったとしても、その内容が一般の人にはまったく理解できないレベルの文章になる可能性があります。

「ビジネス書はゴーストライターが9割」といったような本もあったりしますが、それは著者が楽をしようとしてライターさんが入るというよりは、常人にはまったく理解できないレベルの文章を、一般の人でもわかる文章に落としこみたいがために入っていることの方が多いのではないかと思います。

つまり、ライターさんが入るというのは、出版社側からの指示による事の方が多いという意味です。

なので、さっきの家を建てる例でいうと、ミニチュア模型にあたる部分が原稿執筆にあたり、何を作るのかが明確になるのは原稿執筆が終わった後になるのです。
  
  
さらに言えば、原稿が仕上がり、編集やイラスト図版などを作成していく過程でも、出版社側の編集に対する考えに対して、著者側が「受け入れられない」となってしまったら、やはり出版は無しとなる可能性もあります。

こうしたことから、本当に製本所に原稿を送る直前までは、本当に本が出せるかどうかがわからない状態なので、出版に関する契約は基本的に制作作業がほぼ完了といった状態になって、初めて締結となるのです。
  
  
ちなみに、私の本はライターさんが入った事は一度もなく、全て自分で執筆していますが、2作目の「速読ドリル」が10万部を突破して以降、毎回「今回の本はみんなの期待に応えられているのだろうか…?」というプレッシャーが相当あり、本当に直前になるまで「本当に本を完成させられるのだろうか…?」という思いで執筆にあたっています^^;

出版は一人ではできない

このように、一般的に考えると、作業前に契約を結んでから作業に着手するのが普通と思われますが、出版においては「本当に本ができるのか?」が、原稿が完全に仕上がるまではわからない状態になるので、原稿執筆後~製本直前の間のどこかで行われるのが一般的になります。

「原稿執筆、すごい時間掛けて頑張ったのに、出せずに終わった・・・」となったとしたら、感情的には怒りや落胆の思いが出てくるかもしれませんが、出版社側も本を作るために、原稿執筆までに至る企画構成や本の全体構成、原稿レビューなど、様々な作業に対して時間投資をしてくれているわけなので、そこは双方の時間投資で相殺と考えるべきだと思います。むしろ「そこまで付き合ってくれて、編集者さんありがとう」といった感じです。
  
  
ただ、これらの事をまったく知らずいると、たとえば原稿執筆前の段階で「出版時の自腹買い取り冊数○○○冊」といった条件が入っている契約書を締結してしまい、終わってみたら自費出版よりも多い出費になった上に、まったく売れなかった・・・ということも、可能性としてはなりかねないと思いますので、出版にご興味のある方は、このあたりご注意いただいた方が良いかと思います。



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ABOUTこの記事をかいた人

角田 和将(Tsunoda Kazumasa)

速読コーチ/ビジネス書著者/認定テクニカルアナリスト(CFTe®)

著書に6ヶ月で10万部を超えるベストセラーとなった「1日が27時間になる!速読ドリル(総合法令出版)」をはじめ、『速読日本一が教える すごい読書術』(ダイヤモンド社)、『出口から考えるFX』(パンローリング)などがある。著者累計は15冊で33万部超え。