先日Twitterを見ていたとき、「ゴーストライターの本は読む価値なし」といった記事を見かけました。
私はこれまで8冊の本を出版してきましたが、ライターさんが入った事は一度もなく、文章に関してはすべて自分で書いています。(絵心はないので、イラストがとても多い「速読ドリルシリーズ」は、イラストレーターさんに全面協力いただいておりますが…><)
ビジネス書はゴーストライターが9割とも言われますが、私は今までライターさんが入った経験なく、全て自分で書いてます。
そしてTwitterも、中の人はおらず、全部自分で書いてます。ここで今週の書籍ランキングを見てみると…。
編集者さんってやっぱ凄いなあ…と、改めて実感😅 pic.twitter.com/39Ui8voFk7— 角田和将@速読日本一が教えるすごい読書術 (@SpeedReader_No1) 2018年7月5日
ただ実際のところ、ビジネス書の9割はゴーストライターとも言われるくらいなので、多くのビジネス書は、著者となる方に取材ヒアリング等をして、ライターさんが文章にまとめているのだと思います。私は経験ないので、あくまで推測ですが…。
では、「ライターさんが書いた文章に読む価値はあるのか?」については、Yesの場合も、Noの場合もあると私は考えています。
ざっくり言ってしまえば「その本次第かな…」となるのですが、そのあたりについて今日はまとめてみたいと思います。
ビジネス書の9割はゴーストライターになる理由
なぜビジネス書の9割が著者ではなく、ライターさんが書くことになるのか?
皆さんがパッと思いつく理由としては、著者の方が有名人だと多忙すぎて、書いている暇などないから、ではないかと思います。実際、大企業の社長クラスの方ともなると、執筆している時間はまず取れないと思いますので、その理由は合っていると思います。
ただ、そういった有名人で、自分で書いていないのに作家を名乗っているのを見かけると、批判的な目が出てくるのは仕方ないのかなとは思いますが^^;
で、ビジネス書の9割がゴーストライターになる理由は他にもいろいろとあります。
私は出版系のセミナーに過去、一度だけ参加者として行ったことがありました。
速読ドリルが10万部を超えた後だったこともあり、ほとんどの話が私にとっては今更感と自慢系の話で、正直なところ「つまらん………」と退屈していたのですが、一つだけ興味深い話があったのです。
その話は「編集者ってのは、自分で言いたい事があっても自分でそれを書くことができないから、書くに値する著者を見つけ、名前を借りて書いている」といった主旨でした。(文章まったく盛ってなく、こんな感じの上から目線だったんで、さらにテンション下げられ…)
少なくとも私が関わってきた編集者さんではそういった経験がなかったので、その話を聞いたときには意外感しかなく、世間的に見るとレアケースなんだ…という事を、その時に知りました。
そんな業界的?な背景から、有名人を著者にしたいけど、忙しいから取材形式でもいいので…とお願いし、それをライターさんが文章にまとめ、編集者さんが言いたい事を言える感じに編集して仕上げる、といった流れがメジャーになっているのだろうか…?と思いながら、セミナーを聞いていました。
ビジネス実用系だと、具体的なメソッドやノウハウがメインコンテンツとなるので、誰かの考えや主張といった抽象的な概念が入り込みづらくなりますが、特に自己啓発のような分野だと、マインドセットや思考といった漠然とした話にならざるを得ない面があります。
こうした抽象的な文章表現になりやすいカテゴリで、「編集者が言いたいことを発信している」感じになっている本は、同じ編集者(ゴーストライター)の言霊が乗っかるので、必然的にどの本を読んでも、読了感は似た感じになっていくと思われます。
そういった本はたくさん読んだとしても、いくら著者が違っても同じ本を読んでいるのと変わらないので、たくさん読む事にあまり意味はなく、どれか1冊を繰り返し読み込むほうがいい事になります。
これが「ゴーストライターの本を読む価値はあるのか?」に対するNoの考え方ですね。
ちなみに、「編集者が言いたいことを発信している」感じになっている本の探し方は、本を読む都度、本の最後に載っている「あとがき」と奥付情報の付近を見ると良いかと思います。
出版社によって違うのですが、奥付やその前後のページなどに編集担当の方の名前が載っていたり、あとがきの謝辞に編集者さんの名前が載っていることがあるので、そういったところから編集者さんを特定し、文章の特徴を掴もうとしてみると、また違った視点で読書ができると思います。
場合によっては「この編集者さんの本は、自分にとってはめっちゃわかりやすい!」みたいな発見があるかもしれないので、選書方法の一手段としても有効です。
ゴーストライター次第では読む意味がある理由
では、「ゴーストライターの本を読む価値はあるのか?」に対するYesの考え方はどうか?
キーワードは「専門性」です。
専門的な話になる分野の本は、むしろライターさんが入らないと、本として成立しない可能性が高くなります。
例えば、金融系で活躍されている人が投資関係の話を始めると、一般の人には何語をしゃべっているのかもわからない位、異次元の話になることがあります。
まったく投資に興味がない人に、「ゼロクーポン債」とか「外貨建MMF」といった金融用語オンパレードで話をしても、何を言っているのか全然理解できない状態となってしまいます。
こうした専門的な話を、一般の人でもわかるように上手に翻訳するためにライターさんが間に入るケースも考えられるのです。
読み手の知識や経験値は人によって様々なので、例えるならば「初級、中級、上級」的な理解レベルに対応できる翻訳ライターさんが存在することで、本屋さんに行けば、誰であっても必ず自分にマッチした本が1冊は見つけられる、といった環境が実現しているのかなと思っています。
このような場合は、同じレベルの1冊を繰り返し読み込むだけではなく、今の自分のレベルに合致した文章に触れやすくするために、たくさんの本(類書)を読んでいくほうがいいでしょう。
ゴーストライターが書いた本だからといって、全部が全部ダメってわけでもないのです。
本から何を得るかは自分次第
過去に出版してきた本で常々触れているところですが、文章理解は読み手の知識や経験、周辺環境の影響を強く受けます。
どんな人が書いた文章であれ、理解力が高い読み手だと、既に知っている内容の文章を読んだとしても、新しい気づきを得ることができます。
(ほぼ知っている内容の本を読んだときに時間を無駄にしない「成長の法則」)
https://diamond.jp/articles/-/174292
そういう意味では、ゴーストライターが書いた文章でも、著者が自ら書いた文章でも、読み手となる自分が、「如何に本を活かすか?」という姿勢を持っておくことが重要です。
もちろん本を活かすにあたっては、著者が自身で書いている文章を読むほうが、著者の熱量も含めた言葉の感覚が伝わる意味ではいいと思います。
ただ、「ゴーストライターだから読む価値なし」と思考停止状態で判断するのは、ちょっと違う気がしたので、記事にまとめてみた次第です。
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