行動力がないと悩む人が無意識にハマっている罠

拙著『すごい読書術』では、読書を最大限に活かすためには本(主にビジネス書になりますが)に対して、経験値、周囲の環境情報を掛け合わせることが重要だと説いています。

経験値を積むことや、周囲の環境を変化させるためには、何かしらの行動を起こす必要があります。
  
  
しかし「その行動がなかなかできないんだよ」と悩む人がいらっしゃるかもしれません。

それに対して、ただ単純に「行動が大事」と言い続けてモチベーションを保つ、自己啓発的な感じで乗り切るのは、ちょっと違うと私は思っています。

そういった感じに違和感を覚える事があったので、今日はビジネス書を読んでも行動ができない理由について書いてみます。

対策自体は『すごい読書術』に書かれている内容を実践すればいいのですが、この理由を知った上で実践すると、さらに読書が活かせるようになると思います^^

ビジネス書に書かれている内容は過去の経験則

まず理由を説明する前に、ビジネス書にある一つの前提を書きます。

それは、ビジネス書に書かれている内容は、基本的に著者の過去情報がベースとなって書かれている、ということです。

本によっては、未来展望について書かれている場合もありますが、その未来についても、著者がこれまでに蓄積してきた知識と、経験してきた過去の出来事を掛け合わせた上で算出された予想情報に過ぎません。

過去の情報といっても、著者となっているスペシャリストが経験してきた事を基にした知見がまとめられているものが書籍になります。

「本は結局、過去の情報にすぎない」と言って本を読まない人もいるそうですが、そういった方が自分で「新しい知見を…」と必死になって頑張ってスキルを磨きながら研究して、「このやり方は今までにない新しいものだ!」と思ったとしても、その後、本を読んでみたらその領域に詳しい人ならば誰でも知っている知見だった、となる可能性が高いのです。

ビジネス書の内容と、ビジネス書を読む目的の間に存在する矛盾

このように考えると、読書をしないということは、これまで先人が様々な試行錯誤をしてきた上で出した知恵を無視することになります。

つまり、本を読んでおくことで、間違わなくてもいい失敗を自分が経験しなくても済むのです。

著者が経験してきた失敗を、本を介して、読み手が疑似体験できるからです。
  
  
しかしこれは見方を変えれば、「これをやったら失敗する」という情報をインプットすることになるため、知識や情報が蓄積すればするほど、行動する前に判断を決めつけてしまって、行動しない癖がついてしまうのです。

「勝ち癖」、「負け癖」と似たような感じで、行動しない癖がついてしまうと、仮に行動イメージが持てたとしても、「いや、本当にいいのか…?」と、何となくの不安から行動が起こしにくい状態になりやすいのかなと。
  
  
過去の先人が経験してきた失敗と同じ過ちを避けて、最短で成功にたどり着くために本を活用するわけですが、同時に、同じ失敗を避けようとするがゆえに、行動できなくなる側面があり、ここに矛盾点が存在するのです。

自分では全く意識していなくても、潜在的に「失敗は嫌だ」と避けようとするので、「失敗したくない」という気持ちは必ず存在し、行動力に対しても何かしらの作用が働いている者と考えられます。

自分に置き換えたイメージを作りながら読む

こうした原因をふまえた上で読書を活かしていくことを考えたときに、最も重要となることは、「自分に置き換えたときの行動イメージを作ること」です。

すごい読書術』でも書きましたが、「自分の場合、どうなのか?」というイメージが鮮明に描ければ描けるほど、行動に移してみようと思う好奇心、積極性が生まれやすくなります。

先程の原因と対比して考えれば、自分の行動イメージが意識できていないと、知識による防御線だけが張られてしまい、行動できなくなる壁を突破する原動力がない状態となっている、とも考えられるのです。

この矛盾した現実がある以上、行動できなくなる特徴を避けることはできないかもしれませんが、行動力に制御をかける側面があることを意識しながら本を活かそうとする人とそうではない人との行動力の差は、とても大きいものになるでしょう。
  
  
私がメンターとして仰ぐ師匠がいるのですが、その方が度々発言される言葉にこういったものがあります。

「知るという事は、知った事に対して責任を負うという事。」

今の時点での私のレベルだと、何でも知ろうとする事が必ずしも正しいわけではない、という理解しか得られていないのですが、ひょっとすると、知識をたくさん蓄える事に対する責任感から、行動力の抑制がかかるような流れになるのかな…とも思いました。

今は知らない知識はネットやSNSで調べることもできるわけなので、何でも知識を仕入れようとするのではなく、自分にとって必要だと思った本や情報に絞ったインプットを心がけたほうが、行動力を上げる意味ではいいのかなと思います。

特に、自己啓発本で上げられる行動力(モチベーション)は即効性こそあるものの、短期的で長続きはしないので、少なくとも自己啓発本は数冊に絞ったほうがいいですね。



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角田 和将(Tsunoda Kazumasa)
角田 和将(Tsunoda Kazumasa)
速読コーチ/ビジネス書著者/認定テクニカルアナリスト(CFTe®)

著書に6ヶ月で10万部を超えるベストセラーとなった「1日が27時間になる!速読ドリル(総合法令出版)」をはじめ、『速読日本一が教える すごい読書術』(ダイヤモンド社)、『出口から考えるFX』(パンローリング)などがある。著者累計は15冊で33万部超え。
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