速読というキーワードで検索をすると、必ずと言っていいほど目にする言葉の一つに「右脳」があります。速読法の名前としても「右脳型速読」とか、対義的に「左脳型速読」といったものが見かけられます。
どちらの種類がいいとか悪いということは全くなくて、それぞれに活かせる特徴があります。
右脳型速読術と左脳型速読術、それぞれの特徴をふまえた上で、どのように活かしていけばいいのか、解説したいと思います。
右脳・左脳とは?
まず、そもそも「右脳、左脳って何だ?」というお話しをしておきます。
(既に知ってるよ…って方は、次のセクションまで飛ばしても問題ないです^^)
脳は右側、左側それぞれの半球で構成されていて、文字通り右側を右脳、左側を左脳と呼んでいます。
一般的に右脳はイメージや感覚的な処理を司っていると言われていて、左脳は論理思考や判断処理を司っていると言われています。
※上記『1日10分速読トレーニング』は、2020年3月に『速読の教科書』にリニューアルされました。
少し余談になりますが、物理的に分かれている右脳、左脳に合わせて、機能面もドライに分けて考えること自体には賛否もあり、最近否定論的な記事や本なども見かけるようになりました。
ただ、アメリカの神経心理学者、ロジャー・スペリー氏が1981年に分離脳(右脳、左脳それぞれ独立した時の脳機能)研究でノーベル賞を受賞していることや、仮に「右脳=イメージ、左脳=言語論理ではない」としても、脳処理としてイメージを処理する時に動くプロセスと、言語を処理する時のプロセスはそれぞれ存在するわけです。
実際の処理プロセスは別として、イメージを処理するプロセス、論理思考を処理するプロセスを便宜的に呼ぶという意味では、右脳=イメージ脳、左脳=論理脳という分け方でも今はいいんじゃないかな…(2018年5月27日時点)と思っています。
そんなわけで、本文では「右脳=イメージ処理を司る」、「左脳=論理判断を司る」という感覚で読み進めて頂ければと思います。
多くの人が勘違いしている速読のやり方
では右脳型速読と左脳型速読、それぞれどんな速読術なのか見ていきましょう。
まず左脳型速読ですが、いろんなやり方が実際にはありますが、端的にまとめて言えば「文章構成から要点を探す」読み方になります。
例えば、ビジネス文書なんかでよく見られる書き方なのですが、PREP法という文章構成の組み方があります。
P:Point(結論)
R:Reason(結論に対する根拠)
E:Example(根拠を裏付ける例示)
P:Point(結論で締め)
このような流れで書かれている文章を読むときに、P⇒R⇒E⇒Pの順に読むのではなく、最初と最後の結論部分だけを読み、必要に応じて根拠や裏付けデータを確認するといった流れで読むのです。
結論をまず読んで、「何が言いたいか?」を先に掴む、これが左脳型速読です。文章の論理構成をふまえた読み方になるので、論理構成⇒左脳という発想から「左脳型速読」といったネーミングがついたのかなと思われます。
似たようなネーミングでいろんな流派?もあるようですが、ロジカルに速読ができると謳っている速読術が結果的にたどり着くところは、全てこの主旨の速読法になると個人的には思っています。
この左脳型速読、文章全てを速く読めるということではなく、あくまでもコアとなる内容を速くインプットする意味での速読ということになります。
つまり、全ての文章を速く読めるようになっているわけではなく、読む文量を減らしているだけだということです。
もちろんそれが悪いわけではありません。そもそも要点を把握するのに時間がかかってしまうのは、ビジネスの世界では致命的です。要点を素早く把握する技術としてはとても有効ですし、今の時代には必須レベルのスキルだとも思います。
ただ、例えばビジネス書を読むことを考えると、仮に「コミュニケーションの取り方で悩んでいる」と思って、それに関する要点だけを読んでいくような読み方をするくらいならば、今の時代、ネットで「コミュニケーション テクニック」等と検索すれば、知りたい要点は一瞬にしてGoogleさんがまとめて一覧表示してくれます。
速読と聞いて「知りたい内容を明確にして、それに関する文章だけ読む」みたいなものだと思っている人がいて、そういったやり方を教える教室もあるのですが、こうした速読テクニックを読書に適用するのは、ネットが存在する環境では正直無意味です。
ネットが存在する環境で本を読む意味は、自分では無駄と思って読む文量を切り捨てた部分に目を向けることにあると私は考えています。
自分で意識することができる内容は「検索しよう」とする頭が働くのですが、自分では意識できていないけれど実はとても重要なことに目を向けることは、意識的にできることではありません。
そういった文章に目を向けるためには、読まない場所をつくっていくような速読メソッドは適さないのです。
なので、研究論文や特許文献のような文章を読む時に左脳型速読は活かせるものと私は考えています。
現代の読書に向いている速読メソッド
じゃあ「読書で速読する場合は?」となった時、有効になると考えられるのが「右脳型速読」です。
「右脳型速読」は簡単に言うと、文章をイメージとして認識して理解していく読み方になります。
一文字一文字をなぞって読んでいくのではなく、複数の文字を同時に見て内容を理解していきます。1文字ごとに読んでいくのと、5文字ごとに読んでいくのとでは、後者のほうが速く読み終わることは容易に想像できるかと思います。
一見難しそうに見えるかもしれませんが、実は日本語を日本語として読める人であれば、誰でもできることなのです。
例えば「ジンベエザメ」という言葉があったとき、”ジ”、”ン”、”ベ”、”エ”、”ザ”、”メ”と1文字ずつなぞって読む人は少なく、大抵の人は「ジンベエザメ」という1つの言葉としてパッと見て認識できるのではないでしょうか?
このように一度に複数の文字を同時に見て理解することは、既に皆さんやっていることで、パッと見て理解できる文字数が増えれば増えるほど、より速く読めるようになる。これが右脳型速読になります。
つまり、左脳型速読とは違って、読む文量を減らしているわけではなく、あくまでも全ての文章に目を向けていくことができる速読法になるのです。
では「右脳型速読は万能か?」と言われると、そうではない一面もあります。それは「なぞり読む」癖はなかなか取れないことです。
そもそも「なぜ、なぞり読みをする必要があるのか」というと、言葉を知らないからです。はじめて見る言葉は、言葉として認識できないので、「どういう意味なんだろう?」と思いながら1文字ずつなぞって読むしかないのです。
複数の文字を見て理解するための基となるボキャブラリーを増やすために、なぞり読み(黙読)や音読の過程は必ず必要になるということです。
著書でも「音読自体は必要なこと」とこれまで書き続けてきていますが、こうした理由があるからなのです。
普通に読めない文章は速く読むこともできません(当然ですが)。
しかし、普通に読めるようになる過程でなぞり読みは必須となる以上、多かれ少なかれなぞり読む癖がつかざるを得ないのです。
この事実がある以上、「見て理解」する読み方に切り替えるために、なぞり読む癖を矯正するためのトレーニング(リハビリ)が必要になります。
このトレーニング(リハビリ)を必要とする点が、右脳型速読のデメリットとなるのかなと思います。
ただ一度トレーニング矯正して、「なぞり読み」と「見て理解」、相互に切り替えることができるようになれば、なぞり読む癖が仮にまた戻ってきたとしても、すぐに切り替えられるようになります。
なので、永続的に取り組まなければならないものであると考えれば、そこまでのデメリットにはならないのかな…と個人的には思っています。
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